線形代数

逆行列

(1) 2行2列の行列 A が正則である時、行列 A の逆行列 A1 が存在するが、この時、A1 は正則行列であり、A1 の逆行列、つまり (A1)1A に等しいことを示せ。

(2) 2行2列の行列 A,B が共に正則である時、その積 AB,BA は共に正則であり、その逆行列は各々 (AB)1=B1A1,(BA)1=A1B1 であることを示せ。

先ずは、スマートなやり方で証明を試みる。そのために、行列式の次の性質を証明する。

[行列式の性質]

A,B を2次の正方行列とし、det(A),det(B) を各々の行列式とする。
この時、
det(AB)=det(A)det(B)
が成り立つ。

[証明]

A=[a11a12a21a22], B=[b11b12b21b22]
と置く。

行列 A,B の行列式は
det(A)=a11a22a12a21det(B)=b11b22b12b21
と求められる。

一方で、
AB=[a11a12a21a22][b11b12b21b22]=[a11b11+a12b21a11b12+a12b22a21b11+a22b21a21b12+a22b22]
から、AB の行列式を求めると
det(AB)=(a11b11+a12b21)(a21b12+a22b22)(a11b12+a12b22)(a21b11+a22b21)=(a11a22a12a21)(b11b22b12b21)=det(A)det(B)
となり、主張が正しいことが示される。
(実は、この性質は一般の n 次正方行列について成り立つ。)

この行列式の性質を使って証明を試みよう。

(1)
A が正則であるので、逆行列 A1 が存在し
AA1=E
が成り立つ。ここに E は2行2列の単位行列とする。
両辺の行列式を考えて、先に証明した関係を使えば(単位行列の行列式が 1 であることに注意して)
det(AA1)=det(E)det(A)det(A1)=1
従って、行列 A が正則、つまり det(A)0 であれば、その逆行列 A1 も正則、つまり det(A1)0 であることが分かる。

さらに、行列 A とその逆行列 A1 の間に成り立つ関係式
AA1=A1A=E
は、AA1 の逆行列とも見ることが出来て
(A1)1A1=A1(A1)1=E
となるので、(A1)1=A が成立する。

(2)
A,B を正則行列(つまり、det(A)0,det(B)0)とすると、最初に証明した式より、AB も正則行列となる。
すなわち、
det(AB)=det(A)det(B)0
が成り立つ。
従って、AB の逆行列が存在する。それを (AB)1 と書けば、(AB)1=B1A1 である。何故ならば、
(AB)(B1A1)=A(BB1)A1=AA1=E,(B1A1)(AB)=B1(A1A)B=B1B=E
が成り立つからである。

行列 A,B を入れ替えれば、
(BA)1=A1B1
が成り立つことが分かる。

以上により、(1), (2) が示された。
(証明に用いた行列式に関する性質は一般の n 次正方行列に対して成り立つことを注意したが、このことから、(1), (2) は一般の n 次正方行列に対して成り立つ。)

2行2列の行列に限れば、もっと直接的な計算からも同様の結果を示すことが出来る。

(1)
行列 A の成分を
A=[a11a12a21a22]
と置けば、
A1=1a11a22a12a21[a22a12a21a11]
となり、さらに、この行列の逆行列を求めるために、A1 の行列式を求めると
det(A1)=1(a11a22a12a21)2(a11a22a12a21)=1a11a22a12a21
となることから、A が正則行列(つまり、det(A)0)ならば、A1 も正則行列(つまり、det(A1)0)であることが分かり、さらにその逆行列 (A1)1
(A1)1=11a11a22a12a211a11a22a12a21[a11a12a21a22]=A
となることが分かる。

(2)
行列 A,B を各々
A=[a11a12a21a22], B=[b11b12b21b22]
と置く。この時、行列 A,B 共に正則行列であるとすると
a11a22a12a210b11b22b12b210
が成り立つ。

具体的に AB を計算すれば
AB=[a11a12a21a22][b11b12b21b22]=[a11b11+a12b21a11b12+a12b22a21b11+a22b21a21b12+a22b22]
となる。この行列の行列式を計算すれば
det(AB)=(a11b11+a12b21)(a21b12+a22b22)(a11b12+a12b22)(a21b11+a22b21)=(a11a22a12a21)(b11b22b12b21)0
となり、A,B が共に正則行列であれば AB も正則行列であることが分かる。
(この計算は、最初の行列式の性質の計算と全く同じである。)

行列 AB の逆行列を求めれば
(AB)1=1(a11a22a12a21)(b11b22b12b21)[a21b12+a22b22(a11b12+a12b22)(a21b11+a22b21)a11b11+a12b21]
となるが、一方で、B1A1 を計算すれば
B1A1=1b11b22b12b21[b22b12b21b11]1a11a22a12a21[a22a12a21a11]=1(b11b22b12b21)(a11a22a12a21)[b22a22+b12a21(b22a12+b12a11)(b21a22+b11a21)b21a12+b11a11]
となり、(AB)1=B1A1 が成り立っていることが分かる。

行列 A,B を入れ替えれば、(BA)1=A1B1 も言える。