2つの複素数\(\zeta = {\rm e}^{\frac{\pi{\rm i}}{7}}, \eta = {\rm e}^{\frac{2 \pi {\rm i}}{35}}\)(\({\rm i}\)は虚数単位、\({\rm e}\)は自然対数の底)について、行列\(A\)を
\[
A =
\left(
\begin{array}{cccc}
0 & – \zeta & 0 & 0 \\
\zeta & 0 & 0 & 0 \\
0 & 0 & 0 & – \eta \\
0 & 0 & \eta & 0 \\
\end{array}
\right)
\]
とするとき、\(A^n\)が4次単位行列となるような最小の正の整数\(n\)を求めよ。
\[\begin{align}
A_1 &=
\left(
\begin{array}{cc}
0 & – \zeta \\
\zeta & 0 \\
\end{array}
\right) \\
A_2 &=
\left(
\begin{array}{cc}
0 & – \eta \\
\eta & 0 \\
\end{array}
\right)
\end{align}\]
とする。
\[\begin{align}
A_1^2 &=
\left(
\begin{array}{cc}
– \zeta^2 & 0 \\
0 & – \zeta^2 \\
\end{array}
\right)
= -\zeta^2 E_2 \\
A_2^2 &=
\left(
\begin{array}{cc}
– \eta^2 & 0 \\
0 & – \eta^2 \\
\end{array}
\right)
= – \eta^2 E_2
\end{align}\]
となる事に注意する。ここに\(E_2\)は2次の単位行列を表す。
これらの行列が2つともに\(E_2\)になる時が\(A^n\)が4次の単位行列となる時である。
そのような可能性があるのは\(n\)が偶数の時であり、\(n \equiv 2 \mbox{ (mod 4)}\)の時
\[\begin{align}
A_1^n = – \zeta^n E_2 \\
A_2^n = – \eta^n E_2
\end{align}\]
となり、\(n \equiv 0 \mbox{ (mod 4)}\)の時
\[\begin{align}
A_1^n &= \zeta^n E_2 \\
A_2^n &= \eta^n E_2
\end{align}\]
となる。
ここで、\(\zeta = {\rm e}^{\frac{\pi{\rm i}}{7}}, \eta = {\rm e}^{\frac{2 \pi {\rm i}}{35}}\)において
\[\begin{align}
\zeta^n &= {\rm e}^{\frac{n \pi{\rm i}}{7}} \\
\eta^n &= {\rm e}^{\frac{2 n \pi {\rm i}}{35}}
\end{align}\]
であるので、\(\eta^n = – 1\)となるような自然数\(n\)は存在しない。
すなわち、上で示した\(n \equiv 2 \mbox{ (mod 4)}\)で条件を満たすことはない。
従って、\(\zeta^n, \eta^n\)が共に\(1\)となるような\(n\)が解の候補となる。
それは、\(\zeta^n\)については\(n\)が\(14\)の倍数の時、\(\eta^n\)については\(n\)が\(35\)の倍数の時であり、同時にこの条件が成り立つのは\(14\)と\(35\)の最小公倍数\(70\)の倍数の時である。
\(n \equiv 0 \mbox{ (mod 4)}\)で\(70\)の倍数となる最小の自然数は\(n = 140\)であり、これが求める答えとなる。