線形代数

恒久式の性質

3次正方行列A=(ajk)に対して、その恒久式(permanent)を
perm(A)=a11a22a33+a11a23a32+a12a23a31   +a12a21a33+a13a22a31+a13a21a32
で定義する。いまAのすべての成分が非負(ajk0)であり、かつ
j=13ajk=1   (k=1,2,3)k=13ajk=1   (j=1,2,3)a11=a33a13=a31
が成立するとき、perm(A)の最小値と、それを与える行列Aを求めよ。

与えられた条件をあからさまに書くと
a11+a21+a13=1a12+a22+a32=1a13+a23+a33=1a11+a12+a13=1a21+a22+a23=1a31+a32+a33=1
となり、これらの条件と
a11=a33a13=a31
から
a12=a12=a23=a32
が得られる。

また、この時、与えられた条件のうちで独立なものは
a11+a12+a13=12a12+a22=1
となる。

perm(A)を、これらの条件を使って具体的に書き下すと
perm(A)=a112a22+2a11a122+2a13a122+a132a22=(a112+a132)a22+2a122(a11+a13)
となる。

ここで、a11=x,a13=yとおくと
perm(A)=(x2+y2)(2x+2y1)+2(1xy)2(x+y)
と表すことが出来る。この式は対称式である事に注意して、x+y=s,xy=tとおくと
perm(A)=(s22t)(2s1)+2(1s)2s=s2(2s1)+2s(1s)22t(2s1)
と書き直すことが出来る。

ここで、sは全てのajkが非負であるという条件から
12s1
となる。

従って、2s10であるので、あるsに固定して考えると、tが最大となる時にperm(A)は最小となる。

ここで、相加相乗平均の関係から
xyx+y2
が言えるので、tが最大となるのはx=yの時であり、その時に最大値
xy=(x+y2)2=s22
を取る事が分かる。

この時のperm(A)の値をf(s)と書く事にすると
f(s)=s2(2s1)+2s(1s)22s24(2s1)=3s392s2+2s
となる。f(s)sで微分して増減表を書いて、最小値を求めると
f(s)=9s29s+2=(3s1)(3s2)
s12231f(s)0+f(s)14↘29↗12
となり、s=23の時に最小値29を取る事が分かる。この時、x=yも成立しなければならない事に注意すれば、x=y=13が分かり、行列Aの全ての成分が13である事が分かる。