集合・位相

商ベクトル空間

$V$ をベクトル空間、$W$ を $V$ の部分ベクトル空間とする。

(1) $x, y \in V$ に対して、$x – y \in W$ となるときに $x \sim y$ であると定める時、$\sim$ は $V$ 上の同値関係となることを示せ。

(2) 上で定めた同値関係 $\sim$ による $x \in V$ の同値類を $[x]$ と表し、$\sim$ による $V$ の商集合を $V/W$ と表す。
このとき、同値類 $[x], [y] \in V/W$ に対して、和 $[x] + [y] \in V/W$ を
\begin{align}
[x] + [y] &= [x + y]
\end{align}
により定める時、この和の定義が well-defined であることを示せ。

(3) 同値類 $[x] \in V/W$ および $x \in \mathbb{R}$ に対して、スカラー倍 $c[x] \in V/W$ を
\begin{align}
c[x] &= [c x]
\end{align}
で定める時、このスカラー倍の定義が well-defined であることを示せ。

(2), (3) によって定めた和とスカラー倍によって、$V/W$ はベクトル空間となり、$V/W$ を $W$ による $V$ の商ベクトル空間という。

(1)
$\sim$ が $V$ 上の2項関係であることは明らかであるので
(a) 反射律
(b) 対称律
(c) 推移律
を満たすことを見る。

(a) $\forall x \in V$ に対して、$x – x = 0$ であり、$W$ は $V$ の部分ベクトル空間であるので、$x – x = 0 \in W$ となり、反射律を満たす。

(b) $x \sim y$ のとき、定義より $x – y \in W$ である。ここで、$W$ は $V$ の部分ベクトル空間であるので $- (x – y) \in W$ である。これは $y – x \in W$ すなわち、$y \sim x$ を意味するので、対称律を満たす。

(c) $x \sim y, y \sim z$ とする。すなわち $x – y \in W, y – z \in W$ が成り立つ。$W$ は $V$ の部分ベクトル空間であるので、$(x – y) + (y – z) = x – z \in W$ となり、これは $x \sim z$ を意味するので、推移律を満たす。

以上より、問題で定義された $\sim$ は $V$ における同値関係であることが分かり、その商集合が定義される。それを $V/W$ と書くことにする。

(2)
$x, x’, y, y’ \in V$ に対して、$x \sim x’, y \sim y’$ とする。
このとき
\begin{align}
x – x’ &\in W \\
y – y’ &\in W
\end{align}
が成り立つ。ここで $W$ は部分ベクトル空間であるので
\begin{align}
(x – x’) + (y – y’) &= (x + y) – (x’ + y’) \in W
\end{align}
が成り立つ。すなわち $(x + y) \sim (x’ + y’)$ が成立する。
従って、和の定義において、代表元の取り方に依存しないので well-defined であると言える。

(3)
$x, x’ \in V$ に対して、$x \sim x’$ とする。
このとき
\begin{align}
x – x’ \in W
\end{align}
が成り立つ。 $W$ は部分ベクトル空間でるので、任意の $c \in \mathbb{R}$ に対して
\begin{align}
c(x – x’) &= cx – cx’ \in W
\end{align}
が成り立つ。すなわち $cx \sim cx’$ が成立する。
従って、スカラー倍の定義において、代表元の取り方に依存しないので well-defined であると言える。