$G$ を群、$H$ を $G$ の部分群、$N$ を $G$ の正規部分群とする。
(a) $HN$ は $G$ の部分群であることを示せ。
また、$HN = NH$ を示せ。
(b) $N$ は $HN$ の正規部分群であり、$H \cap N$ は $H$ の正規部分群であることを示せ。
(c) 群の同型
\begin{align}
HN/N \cong H/(H \cap N)
\end{align}
が存在することを示せ。
(a)
$H, N$ はともに $G$ の部分群であるので、$H, G$ のどちらにも単位元 $e$ が存在する。
従って、$e \in HN$ が言える。
また、$HN$ の任意の元 $h \circ n \in H N,\ (h \in H, n \in N)$ を取る。
このとき、$N$ は $G$ の正規部分群であるので、$h N = N h$ である。
つまり、ある $n’ \in N$ が存在して、$h \circ n = n’ \circ h$ が成り立つ。
従って、$h \circ n$ の逆元は
\begin{align}
(h \circ n)^{-1} &= n^{-1} \circ h^{-1} \\
&= h^{-1} \circ n’^{-1} \circ h \circ h^{-1} \\
&= h^{-1} \circ n’^{-1}
\end{align}
となり、$H, N$ ともに $G$ の部分群であるために、$h^{-1} \in H, n’^{-1} \in N$ が言えるので
\begin{align}
(h \circ n)^{-1} &\in HN
\end{align}
が言える。ここで、2項演算に関する括弧は結合則により省略した。
従って、$HN$ は $G$ の部分群であることが分かる。
次に、$H N = N H$ を示す。
先ず、$H N \subset N H$ を示そう。
任意の $h \circ n \in H N,\ (h \in H, n \in N)$ を取ると、$N$ は $G$ の正規部分群であるので、ある $n’ \in N$ が存在して、$h \circ n = n’ \circ h$ が成り立つ。
すなわち、$h \circ n \in N H$ が言えるので、$H N \subset N H$ となる。
さらに、$N H \subset H N$ を示そう。
任意の $n \circ h \in N H,\ (n \in N, h \in H)$ を取ると、$N$ は $G$ の正規部分群であるので、ある $n’ \in N$ が存在して、$n \circ h = h \circ n’$ が成り立つ。
すなわち、$n \circ h \in H N$ が言えるので、$N H \subset H N$ となる。
従って、$HN = NH$ が言える。
(b)
$N \subset HN \subset G$ であり、$N$ は $G$ の正規部分群であるので、明らかに $N$ は $HN$ の正規部分群となる。
次に $H \cap N$ が $H$ の正規部分群となることを示す。
先ず、$H \cap N$ が部分群であることを示そう。
$H, N$ ともに $G$ の部分群であるので、単位元が $H \cap N$ に存在する。
また、任意の $x \in H \cap N$ を取ると、$x \in H, x \in N$ であるので、$H, N$ が $G$ の部分群であることから、$x^{-1} \in H, x^{-1} \in N$ が言える。従って、$x^{-1} \in H \cap N$ となり、逆元の存在も言える。
最後に任意の元 $x_1, x_2 \in H \cap N$ を考える。すなわち、$x_1, x_2 \in H, x_1, x_2 \in N$ とする。
$H, N$ はともに $G$ の部分群であることから、$x_1 \circ x_2 \in H, x_1 \circ x_2 \in N$ となる。
従って、$x_1 \circ x_2 \in H \cap N$ が言えるので、$H \cap N$ は $G$ の部分群をなす。
さらに、$H \cap N \subset H$ であることから、$H$ の部分群であると言える。
また、$H \cap N \subset H \subset G$ であり、$N$ は $G$ の正規部分群であるので、$H \cap N$ は $H$ の正規部分群であると言える。
(c)
(b) の結果より、剰余群 $HN/N, H/(H \cap N)$ が各々定義される。
ここで、写像 $\varphi: HN/N \rightarrow H/(H \cap N)$ を以下のように定める。
$HN/N$ の任意の元を $h N,\ (h \in H)$ とする、このとき、$\varphi(hN) = h(H\cap N)$ で定める。
この写像が well-defined であることは、以下のようにして分かる。
$h_1 N = h_2 N,\ (h_1, h_2 \in H)$ とする。
すなわち、ある $n_1, n_2 \in N$ が存在して、$h_1 \circ n_1 = h_2 \circ n_2$ が成り立つ。
このとき、
\begin{align}
h_1 \circ n_1 &= h_2 \circ n_2 \\
h_1 &= h_2 \circ n_2 \circ n_1^{-1} \\
h_1 (H \cap N) &= (h_2 \circ n_2 \circ n_1^{-1}) (H \cap N) \\
h_1 (H \cap N) &= (h_2 \circ n_2) (H \cap N) \\
h_1 (H \cap N) &= h_2 (H \cap N)
\end{align}
より、$h_1 (H \cap N) = h_2 (H \cap N)$ が言える。従って、この写像 $\varphi$ は well-defined である。
また、この写像は準同型写像であることが次のようにして分かる。
$h_1, h_2 \in H$ とする。
このとき
\begin{align}
\varphi(h_1 \circ h_2) &= (h_1 \circ h_2) (H \cap N)
\end{align}
となるが、もう一方で
\begin{align}
\varphi(h_1) \varphi(h_2) &= (h_1 (H \cap N)) (h_2(H \cap N)) \\
&= (h_1 \circ h_2) (H \cap N)
\end{align}
となる。ここで $H \cap N$ が $H$ の正規部分群であることを用いて剰余類の元における演算が well-defined に定義されることを用いた。
従って、写像 $\varphi$ は準同型写像である。
最後に、写像 $\varphi$ が全単射であることを示す。
任意の $H/(H \cap N)$ の元 $h (H \cap N)$ に対して、$h N \in HN/N$ を取れば、$\varphi(h N) = h (H \cap N)$ となるので、$\varphi$ は全射である。
また、$h_1 (H \cap N) = h_2 (H \cap N)$ とするとき、ある $x, x’ \in H \cap N$ が存在して
\begin{align}
h_1 \circ x &= h_2 \circ x’ \\
h_1 &= h_2 \circ x’ \circ x^{-1}
\end{align}
が成り立つ。ここで、$x, x’ \in N$ に注意すれば
\begin{align}
h_1 N &= (h_2 \circ x’ \circ x^{-1}) N \\
h_1 N &= h_2 N
\end{align}
が言える。従って、$\varphi$ は単射である。
以上の議論により、$\varphi$ は全単射であることが言えるので
\begin{align}
HN/N \cong H/(H \cap N)
\end{align}
が結論付けられる。
※ (b), (c) については、準同型定理を使えばもっとシンプルに証明することが出来るが、愚直な証明を試みた。