次の整数係数の\(n\)次代数方程式が有理数解を持つとする。
\[
a_n x^n + a_{n – 1} x^{n – 1} + \cdots + a_1 x + a_0 = 0
\]
ここに、\(a_i\)は全て整数とし、\(a_n \neq 0, a_0 \neq 0\)であるとする。
この時、この方程式の有理数解\(\alpha\)は次の形に限ることを示せ。
\[
\alpha = \pm \frac{\mbox{\(|a_0|\)の約数}}{\mbox{\(|a_n|\)の約数}}
\]
まず、条件の\(a_n \neq 0, a_0 \neq 0\)について考察する。
\(a_n = 0\)であった場合には、\(n – 1\)次の方程式に帰着するので、この条件により一般性は失わない。
また、\(a_0 = 0\)であった場合には、全ての項から\(x\)をくくり出すことが出来て、やはり\(n – 1\)次の方程式に帰着する。従って、この条件によっても一般性は失わない。
以上の考察から、\(a_n \neq 0, a_0 \neq 0\)と仮定しても一般性は失わないことが分かる。
このとき、与えられた整数係数の\(n\)次代数方程式が有理数解\(\alpha = \frac{p}{q}\)を持つとする。
ここで、\(q \neq 0, p \neq 0\)であり、\(p, q\)は互いに素であるとする。また、\(q > 0\)としても一般性は失わない。
\(p \neq 0\)なる条件は、\(a_0 \neq 0\)であるために、\(x = 0\)は解とはなり得ないことから得られる。
\(\alpha = \frac{p}{q}\)を方程式に代入すると
\[\begin{align}
a_n \left(\frac{p}{q}\right)^n + a_{n – 1} \left(\frac{p}{q}\right)^{n – 1} + \cdots + a_1 \left(\frac{p}{q}\right) + a_0 &= 0 \\
a_n p^n + a_{n – 1} q p^{n – 1} + \cdots + a_1 q^{n – 1} p + a_0 q^n &= 0
\end{align}\]
が得られる。
ここで
\[\begin{align}
a_0 q^n &= – a_n p^n – a_{n – 1} q p^{n – 1} – \cdots – a_1 q^{n – 1} p \\
a_0 q^n &= p(- a_n p^{n – 1} – a_{n – 1} q p^{n – 2} – \cdots – a_1 q^{n – 1})
\end{align}\]
と変形すると、右辺は\(p\)の倍数であることが分かる。
一方で、左辺の\(q^n\)は\(p\)と\(q\)が互いに素であるので、\(a_0\)が\(p\)の倍数であることが分かる。
言い換えると、\(p\)は\(a_0\)の約数である。
さらに、
\[\begin{align}
a_n p^n &= – a_{n – 1} q p^{n – 1} – \cdots – a_1 q^{n – 1} p – a_0 q^n \\
a_n p^n &= q(- a_{n – 1} p^{n – 1} – \cdots – a_1 q^{n – 2} p – a_0 q^{n – 1})
\end{align}\]
と変形することによって、先と同様の議論によって、\(a_n\)は\(q\)の倍数である事がわかる。
言い換えると、\(q\)は\(a_n\)の約数である。
従って、符合を考慮することにより、題意が示される。
この命題は、代数方程式が「有理数解を持つとした場合」におけるその有理数解の必要条件を述べたものである。
従って、有理数解を持たないような代数方程式については、何の情報も与えないことに注意されたい。
例えば
\[\begin{align}
x^2 – 2 &= 0 \\
x^2 + 1 &= 0
\end{align}\]
などの方程式は、上式は、無理数解\(x = \pm \sqrt{2}\)しか持たず、下式は複素数解\(x = \pm {\rm i}\)しか持たないので、有理数解を持たない。この場合、この命題は解について何の情報も与えない。
「整数係数」と限定しているが、「有理数係数」の\(n\)次代数方程式であれば、全ての有理数係数の分母の最小公倍数をかけることにより、整数係数の\(n\)次代数方程式に帰着する。