代数学

コーシー-フロベニウスの補題の応用(2)

縦横 $n \times n$ マスの正方形の盤の各マスに白石か黒石を置く。
盤を回転させて一致するものは同じ配置とみなす時、異なる配置はいくつあるか?

先ず、群 $G$ として、$n \times n$ マスの正方形の盤を $\pi/2$ だけ反時計回りに回転させる変換を $r$ として
\begin{align}
G &= \{e, r, r^2, r^3\}
\end{align}
を考える。ここに、$e$ は0だけ回転させる演算、すなわち単位元を表す。
この集合 $G$ は明らかに群をなす。

次に集合 $X$ を次のように定義する。白石を置く場合を0、黒石を置く場合を1として、$n \times n$ マスの各マスに0もしくは1を配置させる。
この配置に対して、
\begin{align}
X &= \{(a_1, a_2,\cdots, a_{n \times n})|a_i = 0, 1\}
\end{align}
と定義する。

このとき、$G$ の $X$ への作用を $g \in G, x = (a_1, a_2,\cdots, a_{n\times n}) \in X$ とするとき
\begin{align}
g \circ x &= (a_{g(1)}, a_{g(2)}, \cdots, a_{g(n \times n)})
\end{align}
とする、この時、$g(i)$ は、正方形の盤を $r$ により作用させたときに、$x$ の $i$ 番目の成分が写る番号を表す。

$g \circ x$ と $x$ は同じ配置と数えることにすると、求める場合の数 $N$ は、$G$ 軌道の個数に等しい。
そこで、コーシー-フロベニウスの補題を使って、$N$ を求める。

$X$ の任意の元 $x \in X$ に対して、$e \circ x = x$ であるので、$|{\rm Fix}(e)| = |X| = 2^{n^2}$ である。

以下、$n$ が偶数と奇数の場合に別けて考える。
先ず、$n$ を奇数とする。

このとき、$r \circ x = x$ となるような配置は、$n^2 – 1$ が4の倍数であることに注意して
\begin{align}
{\rm Fix}(r) &= 2 \times 2^{\frac{n^2 – 1}{4}} \\
&= 2^{\frac{n^2 + 3}{4}}
\end{align}
が得られる。
同様に考えれば
\begin{align}
{\rm Fix}(r^3) &= {\rm Fix}(r)
\end{align}
も得られる。

更に、$r^2 \circ x = x$ となるような配置は
\begin{align}
{\rm Fix}(r^2) &= 2 \times 2^{\frac{n^2 – 1}{2}} \\
&= 2^{\frac{n^2 + 1}{2}}
\end{align}
と求まる。
従って、$n$ が奇数のときには
\begin{align}
N &= \frac{1}{4}\left(2^{n^2} + 2 \times 2^{\frac{n^2 + 3}{4}} + 2^{\frac{n^2 + 1}{2}}\right) \\
&= 2^{n^2 – 2} + 2^{\frac{n^2 + 3}{4} – 2} + 2^{\frac{n^2 + 1}{2} – 2}
\end{align}
と求まる。

$n$ が偶数の場合には
\begin{align}
{\rm Fix}(e) &= 2^{n^2} \\
{\rm Fix}(r) &= {\rm Fix}(r^3) = 2^{\frac{n^2}{4}} \\
{\rm Fix}(r^2) &= 2^{\frac{n^2}{2}}
\end{align}
より、
\begin{align}
N &= 2^{n^2 – 2} + 2^{\frac{n^2}{4} – 1} + 2^{\frac{n^2}{2} – 2}
\end{align}
と求まる。