数理経済学(ゲーム理論)

ナッシュ均衡

9人で以下のようなゲームを行う。

各自、手元の紙に、0以上100以下の実数を書く。
全員が書き終えたら、すべての紙を回収し、紙に書かれている数字を全て加えて10で割って得られる数を X とする。
X に一番近い数を書いていた人を勝者として、賞金900円が与えられる。
勝者が複数いる場合には、賞金900円を勝者で当分配する。

このゲームにおいて、ナッシュ均衡は存在するか?
存在するなら、その全てを挙げ、存在しないなら、その証明を与えよ。

ゲームの参加者に各々1から9までの番号を割り振り、各参加者を i (i=1,2,,9) で区別する。
参加者 i が紙に書く数字を Xi とする。

このとき、
Xi=0 for all i (i=1,2,3,,9)
はナッシュ均衡を与えることが以下のようにして分かる。

ある特定の参加者 i (1i9) について考える。
参加者 i 以外のプレイヤーが全員 0 と書いた場合、参加者 i がどのような実数を書けば最適かを考える。
例えば、Xi0 と書いたとする。このとき
X=Xi10
となり、
|Xi10Xi|=910Xi>|Xi100|=Xi10
となるために、参加者 iXi0 と書けば、何も得ることが出来ない。
一方で、参加者 i が他の参加者に合わせて 0 を書けば100円を得ることが出来るので、これが参加者 i の最善の戦略となる。

この議論は全ての参加者 i (19) について成り立つので、
Xi=0 for all i (1i9)
はナッシュ均衡を与える。

さらに、このゲームにおいて、上記以外のナッシュ均衡は存在しないことが次のようにして分かる。

仮に、Xi=Xi がナッシュ均衡を与えると仮定する。
このとき、参加者 iの戦略について考える。
X=X1++X910
として
|XXi|
を考える。
ここで、Xi=Xiϵ (ϵ>0) (かつ ϵ は十分に小さい実数とする)を考えると
|X(Xiϵ)|=|XXi+ϵ|
となるが、Xi がナッシュ均衡であるという仮定から
|XXi+ϵ||XXi|
でなくてはならない。なぜなら、これが成り立たない場合には、Xi がプレイヤーiの最善の戦略ではなくXiϵ が最善の戦略となるからである。
これは、
XXi0
を意味する。(ここで、ϵ が十分に小さいという条件を用いた。)

さらに、同じ様に、Xi=Xi+ϵ (ϵ>0) を考えることにより、同様の議論から
XXi0
が得られる。2つの条件を合わせると
XXi=0
が得られる。
これは
X1++X910=Xi
であるが、これが全ての i=1,2,,9 に対して成り立つはずなので、全ての i について足せば
910(X1++X9)=X1++X9X1++X9=0
ここで、Xi0 であるので、
Xi=0 for all i (1i9)
が得られる。すなわち、このゲームのナッシュ均衡は先に述べた Xi=0 (for all i) のみであることが分かる。