代数学

4元数群

A=(0110),B=(0110)GL2(C)
で生成される GL2(C) の部分群を Q8 と置く。

(a) A4=E2,B2=A2,BAB1=A1 を確かめよ。

(b) Q8 は位数 8 の群であることを示せ。

(c) 中心 Z(Q8) を求めよ。

(d) Q8 の任意の部分群は正規部分群であることを示せ。

(e) 群 G が2つの元 a,b で生成され、a,b は関係式 a4=1,b2=a2,bab1=a1 を満たすとする。
このとき、|G|8 であることを示せ。
さらに、|G|=8 ならば、GQ8 と同型であることを示せ。

(f) 群 G が4つの元 i,j,k,u で生成され、i,j,k,u は関係式
i2=j2=k2=uu2=1ij=k,jk=i,ki=j,
を満たすとする。
このとき、|G|8 であることを示せ。
さらに、|G|=8 ならば GQ8 と同型であることを示せ。

(a)
A2=(0110)(0110)=(1001)A4=E2B2=(0110)(0110)=(1001)=A2BAB1=(0110)(0110)(0110)=(0110)=A1

(b)
先ず、明らかに AB なので、{A,B}Q8 である。
また、(a) より A4=E2 なので、Q8 には単位元 E2Q8 が含まれる。
さらに、A2=B2=E2 より、A1=A,B1=B が分かり、明らかに、A,BE2,A,B のどれとも異なる。また、E2Q8 に含まれることが分かる。
また、A3=A2A=E2A=A,B3=B2B=B であり、どちらも今までに現れた元で表すことが出来る。
以上で示されたことは
Q8{±E2,±A,±B}
である。

次に、AB の積を考える。
AB=(0110)(0110)=(1001)
となり、これまでに現れた元とは異なる。
さらに、この逆元は
(1001)1=(1001)=AB
となり、これも新しい元となる。

一方で、BA を計算すると
BA=(0110)(0110)=(1001)=AB
となり、新たな元とはならない。この逆元も (BA)1=AB となり、新たな元とはならない。

最後に AB とこれまでに Q8 に含まれていると分かっている ±A,±B との演算を考える。
A(AB)=A2B=B(AB)A=A(BA)=A(A1B)=BB(AB)=(BA)B=(A1B)B=A1B2=B(AB)B=AB2=A
となり、全てこれまでに現れた元で表されることが分かる。
BA についても同様である。

さらに、AB 自身の2乗を計算すると
(AB)2=(1001)2=E2
となり、やはりこれまで得られている元に含まれる。

以上の議論により、
Q8={±E2,±A,±B,±AB}
で与えられる Q8 群となり、その位数は 8 であることが分かる。

(c)
Q8 の中心 Z(Q8) の定義は
Z(Q8)={gQ8|hQ8,gh=hg}
であり、±E2 は明らかに Z(Q8) に含まれる。
また、他の元は上記の条件を満たさない。従って
Z(Q8)={±E2}
と求まる。

(d)
G の位数が 8 であるので、群 G の部分群は位数が 1, 2, 4, 8 である。
このうち、位数が 1 の部分群は自明な部分群 {E2} であり、位数 8 の部分群は G そのものである。
従って、この2つは明らかに正規部分群となる。

先に、指数が 2 の部分群は正規部分群であることを示した。(参照)
従って、位数が 4 の部分群は正規部分群となる。

これより、確かめるべきは位数が 2 の部分群であるが、これは G={±E2} であり、明らかに正規部分群である。

以上より題意が示された。

(e)
G が2つの元 a,b で生成されるとする。
このとき、f(A)=a,f(B)=b を満たす、全射な準同型写像 f:Q8G が存在することが分かる。

実際に、群 G=a,b に対して、f(A)=a,f(B)=b を満たす準同型写像を f:Q8G とすると
f(A4)=f(E2) より a4=1f(B2)=f(A2) より b2=a2f(BAB1)=f(A1) より bab1=a1
が成り立つ。
このとき、a4=1 より、a3=a1 が得られ、同様に、b4=(b2)2=(a2)2=a4=1 より、b1=b3 が得られる。
さらに、bab1=a1 より、ba=a1b=a3bab=b1a1b2=b3a3a2=b3a も言える。これらの逆元も a,b で表すことが出来る。
従って、準同型写像 f:Q8GG=a,b への全射であることが分かる。

従って、|G||Q8|=8 が成り立ち、特に |G|=8 のときには、準同型写像 f は全単射となり、GQ8 が言える。

(f)
問題 (e) との類似性に注目して、準同型写像 f:Q8Gf(A)=i,f(B)=j と定める。
このとき、
f(A2)=f(B2) より i2=j2f(A4)=f(E2) より i4=1f(BAB1)=f(A1) より jij1=i1
が成り立つ。
さらに、f(AB)=f(A)f(B)=ij=k,f(E2)=u と定めると
f((AB)2)=f(AB)f(AB)=kk=uf(B(AB))=f(B)f(AB)=jk=if((AB)A)=f(AB)f(A)=ki=j
が成り立つ。先の3番目の式は、これらの関係式を使えば
jij1=kiii1k1=ki2i3k3=kik3=jkk2=ik2=ii2=i3=i1
となり、これらの関係式と矛盾しない。

従って、準同型写像 f:Q8G は群 G=i,j,k への全射となる。
従って、|G|8 が言えて、|G|=8 であれば、f は全単射となり、GQ8 が言える。